大澤信亮

批評家・日本映画大学教授

小林秀雄

本日発売の「新潮」7月号より連載「小林秀雄」を始めます。

わざわざ誌面を頂く以上、色々な企みはあります。しかし、僕の問いを率直に示せば、すでに「新潮」4月号に発表した「小林秀雄序論」で書いたように、

どうすれば抜け殻の集積から「生命」を生み出すことができるのか。それを行う者はいかなる境地にあらねばならないか。その境地に到ろうとすることと、物質的には私性に属しているかに見える意識=批評を「無私」へと到らしめようとする努力は、いかなる関係にあるのか。その試みと、物質から生命を生み出した力は、そして、宇宙そのものを生み出した力は、いかなる関係にあるのか。

というようなことを考えています。もちろん問題は、このような議論を口上ですることと、そのような境地に到ることはまったく違うということです。むしろ僕は、この種の議論を拒絶することが、それを実行するための第一歩だと思っています。この論じない批評がどこまで行けるのか。長い道ですがご期待ください。

なお「群像」の島田雅彦氏、谷崎由依氏との創作合評は、今月で終わりです。