大澤信亮

批評家・日本映画大学教授

今月の仕事

「新潮」10月号の「小林秀雄」第4回の梗概です。

今回は幕末明治の日本とフランスの関係から入りました。1910年の大逆事件で文学から政治が切り離されることで、明治以来、実学性を問われてこなかったフランス文化が結果として隆盛した。そのなかで小林のフランス文学受容も形成された。それが、ボードレール象徴主義(=目の前の現実を否定して言葉による自立した空間の構築を目指す欲望)と共鳴するが、小林はその自閉性に息苦しさも感じていた。そこにランボーが「外部」を見開かせる。そういう小林を、彼の十歳年長で、やはりボードレールに魅了されていた芥川龍之介と対比させながら描きました。

今月は非常に大切な対談も控えています。お楽しみに。