大澤信亮

批評家・日本映画大学教授

新年

あけましておめでとうございます。

報告が遅れましたが、先月から「新潮」の「小林秀雄」第二部を再開しています。今月の「すばる」には「すばるクリティーク賞」の選考結果(受賞作なし)と選考会が掲載されています。昨年10月には「武蔵野樹林」に「古層探偵」の第三回も掲載。

今にも戦争が始まりそうな現下、昨年国内で起きた複数の通り魔的な殺害事件、肉親の殺し合いなどを想いながら、かつて大塚英志さんが述べた、「「反戦」とは「殺されたくない」でも「殺すな」でもなく「私は殺さない」という選択に他ならない」という言葉を思い出しています。ただし、それは「選択」できるものではなく、「殺すも殺さぬも物のはずみ」(小林秀雄)という残酷な偶然性に曝されるなかで、諸個人それぞれが自らの血と涙を代償として辿り着くほかない、人性の「必然」だと僕は感じています。

それでは本年もよろしくお願い申し上げます。